「もし、自分が死んだあとも、“AI化された自分”がSNSに投稿し、家族と会話し続けたら――?」
そんな未来がもはや“遠いSF”ではなくなった今、平野啓一郎が突きつけるのは、「本心とは何か」というシンプルな問いです。
本記事では、話題の小説『本心』を、ネタバレなしで紹介しつつ、その魅力とメッセージを探っていきます。
書籍データ
- タイトル:本心
- 著者:平野啓一郎
- 出版社:文藝春秋
- 発売日:2021年6月
- ジャンル:近未来文学/SF/ヒューマンドラマ
『本心』のあらすじ(ネタバレなし)
物語の舞台は、死者の人格をAIで再現することが当たり前になった社会。
主人公・青山朔也は、母の死をきっかけに「再現AI」として母を“蘇らせる”ことを依頼する。
しかし、現れたAIの母は、自分が知っていた母とは“どこか違う”。
そこに「人間の本心とは、どこにあるのか」という問いが浮かび上がる――。
『本心』のテーマと見どころ
💡現代的テーマ「AI×死×アイデンティティ」
「AIによる人格の再現」という設定はSF的ながらも、SNSやディープフェイクが身近になった今だからこそ、リアルに感じられます。
「生きている自分」と「ネット上の自分」。
「亡くなった人の記憶」と「再現された記憶」。
その間にあるズレに、主人公も、そして読者も戸惑わされます。
💡分人主義の進化系?
平野啓一郎が提唱する「分人主義」――
人は一人ではなく、複数の人格(分人)として社会の中で存在しているという考え。
この作品では、それが「AI分人」として極限まで拡張されています。
「他者にとっての“私”と、自分にとっての“私”は、同じなのか?」
そんな問いが、静かに、けれど確実に心に刺さります。
著者・平野啓一郎とは?
芥川賞作家としても知られる平野啓一郎は、これまでも『マチネの終わりに』『ある男』など、人間の内面やアイデンティティに鋭く迫る作品を多数発表してきました。
『本心』は、そうした彼の思想が、テクノロジーという新しい切り口を通じてさらに深まった意欲作といえるでしょう。
読後感:静かに震える、問いの余韻
本書を読み終えたあと、しばらくは物語から抜け出せない余韻が続きました。
それは、「私は、誰なのか」という問いを、自分自身にも返されるからかもしれません。
未来の物語なのに、ものすごく“今”を突き刺す。
そして、それはきっと、あなたの“本心”にも響くはずです。
こんな人におすすめ!
- SFや近未来が好きな人
- AI・死・記憶などのテーマに興味がある人
- 「分人主義」に関心のある人
- 平野啓一郎作品をこれまで読んできた人
【まとめ】『本心』は、自分の「本心」と出会うための物語
『本心』は、テクノロジーを通して人間の“本質”に迫る一冊。
「死んでも消えない“自分”」という未来を前に、私たちは何を選ぶのか。
ぜひ一度、あなた自身の“本心”と向き合ってみてください。